リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2010年9月21日

第58回再建築不可の物件

 競売市場には、一般市場では稀な物件がよく見られる。その一つが再建築不可の物件である。その原因は主に敷地が建築基準法の道路に面していない、いわゆる無道路地であることにある。

 こういった物件は任意売却で処理されず、結局、競売市場に出てくることになりがちである。

 9月2日開札でも、東武東上線「成増」駅徒歩13分に立地する戸建が、この再建築不可物件である。建物敷地は約15坪と狭小で、建物も築36年の古家である。公道に面さず、かつ公道から伸びる位置指定道路にも面していない、いわゆる無道路地である。

 競売において、この無道路地はどのように評価されているか、本物件の評価書を見てみる。すると、そこには無道路地として個別減価50%となっていた。

 しかし、築年が古く、再築ができないということでは、50%の減価でも決して安くないように思える。

 しかし現実には、こういった物件も競落されることが多い。例えば、先の成増の物件も売却基準価額548万円に対し、入札が3本入り、711万円にて競落されていったのである。

 こういった再建築不可の物件に、なぜ入札があるのか。それには、いくつか考えられるケースがある。一つは建物を使用して、収益を上げる場合である。これは例えばシェアハウス転用などである。投資金額が小さいので、高利回りを実現できる。

 もう一つは接道条件を隣地の追加買収等を行い、クリアして商品化するという方法である(先の成増の物件はこのケースと思われる)。

 さらに考えられるのは、隣地の所有者の取得である。接道を満たしている隣地にとっては格安な土地取得になる。再建築不可の物件も戦略によってビジネスチャンスになる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.