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東京競売ウォッチ

2010年7月12日

第49回今年上半期の開札

 先の6月24日開札をもって今年上半期の開札は全て終了した。今年上半期における開札回数は15回で、対象物件数は合計1,124物件であった。

 昨年上半期と比べると、開札回数では2回増えたものの、対象物件数では約3割の455物件減少した。これは開札1回あたりの物件数が昨年上半期は120件を超えていたが、今年上半期は約75物件と急激に低下したことにある。

 昨年前半の勢いでは、競売物件がここまで減少するとは思われなかった。その要因の一つには、中小企業金融安定化法などによる金融機関の条件変更に応じるなどなど、回収姿勢の変化があると思われる。

 また、この上半期では落札1物件あたりの入札本数が12本を超えているが、これは昨年1年間の平均約8本の5割増しである。落札競争が激化しているが、その主たる原因はマンションにある。マンションについては、落札価格の売却基準価額に対する上乗せ率が、この上半期58%強であった。昨年1年間の平均約36%を大きく上回っており、落札水準がここ1年で2割近い上昇になっている。

 あともう一つ、上半期の特徴としては、1件あたりの落札価格総額が高くなってきたことがある。この上半期では約5,530万円であったが、昨年比で約25%増である。この原因は、ここのところ破綻不動産会社の事業用物件が対象になったことにもある。

 6月24日も銀座線「溜池山王」駅徒歩3分に立地する業者所有の古い店舗兼共同住宅の物件が開札になった。土地が50坪ほどで、売却基準価額は3億8,745万円であったが、結果は入札1本のみで、落札されたのはほぼ買受可能価額の3億1,003万円であった。

 権利関係が複雑な物件ではあるが、やはりマンションに比すれば、商業地への応札には力強さを感じない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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