リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2012年5月1日

第134回 浜田山の区分所有店舗

 このところ、個人の賃料収益目的での不動産購入の動きが活発になってきていると不動産業者からよく聞く。とくに、借入金を伴わなくても購入できる、小ぶりな物件には関心が高いようだ。

 4月12日開札で一番人気になったのは、京王井の頭線「浜田山」駅徒歩1分に立地する区分所有の店舗であった。駅商店街の中に立地する1階の路面店舗で、現状飲食店(バー)が営業されている。専有面積約5.6坪のこの店の売却基準価額は306万円であった。

 これに対し入札43本が入り、売却基準価額の3倍を超える最高価1,013万円強で個人が落札していった。現状の賃料は年間142万円弱で、管理費・修繕積立金、それに固定資産税等を差し引いたネット収入は約122万円と見られる。競落金額から単純に計算すれば、年利約12%という競落水準になる。

 しかし、この物件には滞納管理費や、管理組合に納めなければならない修繕一時金が合計で、約150万円ある。したがって、これを考慮すれば、年利10%強に下がってくる。

 さらに、この物件の賃借権者が、短期賃借権廃止前からの占有なので、旧法扱いとなるため、買受人は賃借権者が貸主に預けている保証金(この物件は200万円)の返還義務を引き継ぐことになる。

 種々考慮すると、結構高い水準の競落価格かと思われるが、競落人には賃借しやすい立地等が大きな魅力に思えたのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.