リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2023年10月31日

第672回 湾岸タワーマンションの次順位無し競落

 都心のマンション価格は上昇傾向が続いている。2023年上半期の新築分譲マンションの平均価格は1億円を突破し、まさに平成バブル時代を彷彿とさせる状況である。そんな中ゆりかもめ「有明テニスの森」駅徒歩約5分に立地するタワーマンションが10月11日開札で対象になった。このマンション、築年は15年、33階建ての32階に位置し、専有面積は約37坪であった。またこのマンションの競売の評価書では価格補正1.55倍、個別格差1.15倍とかなり評価をかさ上げしてあり、その結果売却基準価額は1億1168万円になった。それに対し入札は10本あり、次順位資格の入札者無しの最高価1億8510万円にて競落されていった。専有面積坪単価500万円であるが、専有面積100㎡超の物件が少なく希少でもあり、競落者の強気の入札となったようだ。ちなみにこのマンションの推定される相続税評価額であるが、従来の方法では約8000万円と思われる。しかし今般の相続評価の改正案に照らしてこのマンションの新相続税評価額を試算すると、おそらく従来評価額の約2倍になると推定する。すると8000万円の2倍の1億6000万円が来年からの新相続税評価額になりそうだ。この評価額は先の競落価格よりは下回るものの実勢価格との差は大きく減少することになる。

 相続税節税対策でのタワーマンション購入は需要の大きな要素であるので、この改正がどのくらいタワーマンションの流通価格に影響するのか、注目であろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.