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東京競売ウォッチ

2018年7月24日

第423回 好立地借地物件地主落札!!

 7月5日開札では借地権付建物に12本の入札が集まったのに目を引かれた。その物件は京急本線「梅屋敷」駅徒歩約2分に立地する工場兼共同住宅であった。

 敷地は56坪弱で、建物は鉄骨造の2階建、延床面積は約66坪ある。昭和38年築という古い建物で、1階が工場、2階が2DK3部屋という作りである。西側では幅員5m弱の公道と南側では幅員約4mの私道に面する角地である。この物件の売却基準価額は2324万円であったが、これに対し先述のとおり12本の入札があり、4001万円でこの借地権付建物の地主が落札していった。

 売却基準価額に対し70%以上上乗せしての落札であり、何とか落札したかったという意志が伝わってくる。それも理解できるのが、この借地権付建物の敷地は地主が所有する約260坪のうちの一部で、分筆はなされていない。そしてこの対象となった借地部分はその地主所有地の北西の角を占めており、地主としてはその所有地全体の価値がこの競売対象借地部分が取得できるか否かによって大きく異なってくる。

 仮に第三者が競落した場合、名義変更料が評価書上の計算で400万円以上は請求できるが、競落して完全所有権になれば1億円以上の更地価格になることを考えれば、競落した方が圧倒的に経済効果は高いと言える。それにしても入札価格は好立地物件だけに設定が難しかったと思う。次順位入札価格が3800万円弱であったことで、競落した地主は胸をなで下ろしたであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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