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東京競売ウォッチ

2010年6月28日

第47回居住用の収益型物件

 このところ不動産市場では、中古マンションとともに1棟の居住用収益型物件でグロス価格が3億円未満のものの取引の活発化がよく話題となる。

 そんな中、6月15日開札では、西武新宿線「都立家政」駅徒歩10分に立地する1棟物件が対象であった。ワンルームの部屋が全部で29戸からなるこの物件は、建物が築25年の鉄筋コンクリート造6階建てで、土地は約67坪ある。この物件の収益は満室前提で年間、グロス2,000万円ほどである。

 この条件で売却基準価額は9,911万円で、これに対し入札13本が入り、最高価1億7,007万円にて落札されていった。

 この落札価格は利回り水準表面で年12%程度となるが、問題は建物の管理がかなり杜撰であることである。現況調査報告書によれば、複数の部屋で雨漏りやカビ、壁紙のはがれなどがあり、多くのテナントからのクレームを抱えているようだ。落札者は相当の改修費用を要することになりそうだ。

 一方この日、JR中央線「中野」駅徒歩12分に立地するワンルームマンションも対象になったが、こちらは総戸数11戸、築26年の建物の中の専有面積約5坪の低グレード狭小物件であったが、売却基準価額299万円に対し、入札14本が入り、最高価410万円で落札されている。この物件の現在の収入は管理費等控除後で50万円強である。この落札水準は承継敷金など考慮すると、利回り年12%程度と、先の1棟ものと同じである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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