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東京競売ウォッチ

2009年9月21日

第9回 再販業者と個人の応札

 競売市場において、よく個人名入札が増加しているのでは、ということが言われる。 しかし、毎回の開札データを見ると、特段増加しているようには思えない。

 全体的には総落札物件の2割程度の感じであるが、個人の落札物件には偏りがある。 マンションや戸建てで住宅ローンが使用できる一次取得者層向けの実需ファミリー物件には個人入札が少なく、 概ねは再販業者が落札していく。一方でワンルームマンションをはじめとする投資用物件には個人名が目立つ。

 9月8日の開札では、JR新橋駅前の「ニュー新橋ビル」内の区分所有店舗が対象になった。 このビルは昭和46年竣工の歴史あるビルで、テレビの街頭インタビューでもよく映っている。

 対象となった物件は4階に位置する専有面積約11坪の部屋で、売却基準価額が1,781万円である。 これに対し入札が7本あり、最高価1,850万円にて個人が落札していった。

 滞納管理費など含めると総取得コストは2,000万円超である。一方、これを 賃貸した場合の実質収入は高い管理費(月額約65,000円)を考えれば、年収で160万円程度であろう。 よって競落水準は実質約8%の水準ということになる。

 いずれにしろ、こういった物件には再販業者の応札がほとんどない。再販という出口が見えづらい物件は 業者には敬遠されるのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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