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東京競売ウォッチ

2010年5月10日

第40回築浅ビルの需要

 リーマンショック前まで東京ではミニバブルの様相であったが、06年前後に建築された不動産会社のビルなどは、大きくその価値を毀損している。

 しかし、それらの多くは債権者である銀行等が90年代のバブル崩壊のときのように損切り処理を急がず、返済期限の延長や担保物件を引き取るなどをすることが多くなっている。

 これは今回のミニバブルでは融資対象不動産が金利を上回る収益を生んでいる場合が多いことが大きな要因となっている。したがって、競売市場に築浅の収益ビルがそれほど多く登場していないのである。

 そんな中、4月22日開札で地下鉄日比谷線「小伝馬町」駅徒歩3分に立地する事務所ビルが開札になった。その物件は土地が約28坪で、建物は06年建築の鉄筋コンクリート造8階建て、延面積約162坪である。このビルの収益については、年2,200万円ほど見込まれるが、ネット収入は年1,700万円ほどであろう。

 結果、この物件の売却基準価額1億6,568万円に対し入札15本が集まり、最高価2億2,107万円で落札されていった。これの水準は収益利回りで実質8%弱であろうと思われるが、このビルは一部所有者が使用しており、明渡しコストが生じる可能性等あるので、もう少し低い収益性になるかもしれない。

 事務所賃貸市場の低迷から事務所ビル人気は住宅系に比べると低いのであるが、それでも年7%以上で築浅であれば需要があるようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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