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2014年1月7日

第212回 低グロスの郊外型マンション

 建築費が上昇している。マンションデベロッパーは揃って来春以降の分譲事業に関し、ゼネコン対応に懸念を持っているようだ。

 現在、建設原価は専有面積22~23坪の1部屋あたり2,000万円は優に超えるようになっていると聞く。これにより影響を大きく受けるのは、特に郊外型1次取得層向け物件である。1次取得向け物件は、分譲総額に限度がある。1戸あたりの分譲価格は年収の5~6倍を目途とした3,000~4,000万円が中心にならざるを得ない。ゆえに、建設原価が先述のように高いと言っても売値を容易に伸ばせず、その分、用地取得費用を抑えたいと考える。

 しかし、世間では「アベノミクス」効果を見込んで多くの地主が強気に転じ、価格交渉に応じない状況が出てきているようだ。したがって、郊外1次取得者向けマンションの供給は今年以降、減少するとも見られる。またそれは、中古マンションのリニューアル販売の活発化にもつながると予想される

 12月5日開札で、東武伊勢崎線「梅島」駅徒歩約13分に立地する、築13年で専有面積約26坪の2LDK+サービスルーム等の部屋が売却基準価額1,411万円のところ、35本集まり、最高価2,314万円強で再販業者が落札していった。この物件には滞納管理費等が50万円程度あるので、売却基準価額の70%上乗せの水準であり、築年が古くはないとはいえ、この立地にしては高いように思う。現在の売却状況を見てみると、販売坪単価100~110万円程度が同程度の物件の標準的売値である。

 しかし、この落札物件の再販価格は再販利益を10%程度見込むなら、リフォーム費用も勘案して、坪単価120万円以上の販売価格になるだろう。今年の低グロスの郊外型マンションの希少性を見越した入札かもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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