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東京競売ウォッチ

2018年6月12日

第417回 底地に13本の入札が集まる!!

 旧法借地権が設定されている土地は競売においてはあまり見かけない。というのも金融機関は底地を融資の担保としないことから、結果として競売の申立てが無いのである。

 しかし5月24日にはその底地が対象になった。その土地は東京メトロ半蔵門線「押上」駅徒歩約9分に存する。南東側で幅員4mの公道に面する約19.5坪で、地代は月額23100円で平成32年3月5日まで賃貸借契約期間がある。固定資産税・都市計画税の年税は約36000円であるので実質年収は24.1万円である。これに対し売却基準価額は433万円で年約5.5%の利回り水準である。一方でこの底地の相続税評価額は正面路線価(22.5万円/㎡、借地権割合60%)から推して580万円程度である。そんな条件で結果は入札13本入り最高価1090万円にて競落された。

 おそらくは不動産業者であろう。この価格では地代での収益利回りは年2%強しか望めないので、競落会社は纏まるかどうかは不確定ながら借地権者と交渉して借地権買取か、競落した底地との共同売却を考えるであろう。そもそもこの底地は共有持分2分の1を公売にて競落した不動産会社が共有物分割訴訟を経て競売を申し立て、今般全体土地の換価競売になったものである。今回もおそらくは申立人も入札参加したであろうが、より高い入札価格で競落され、申立人はその配当で十分採算がとれるのではないだろうか。従来不動産業者が敬遠しがちであった底地にも多くの入札が集まる状況になっている。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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