リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2012年9月4日

第150回 物件あたり落札平均価格が低下

 東京地裁では、ここ2年ほどは競落1物件あたりの落札平均価格が低下している。2010年では約5,300万円であったところ、昨年2011年の平均は4,000万円弱、今年2012年上半期では3,500万円を割り込んでいる。

 これは、対象物件の中に、1棟のビルなどで、総額が張る物件が少ないことが1つの原因である。実際今年に入って、競落価格が5億円を超えた物件は2物件しかなかった。

 さて、最近1棟の事業用ビルの物件が競売市場に少ないのは、推測ではあるが、先に施行された「中小企業金融円滑化法」の影響がありそうだ。同法が中小事業者の融資について、本社社屋など、強制回収に金融機関が入るのを抑制するからである。

 そんな中、8月9日開札では、競落価格が15億円超の物件があった。それは品川区東品川に立地する事務所ビルである。築20年強の延床面積が約1,300坪のビルで、見込まれる賃料年収は1億円超かと思われる。

 このビルの売却基準価額は6億5,000万円強であったが、これに対し、入札が6本あり、最高価15億3,709万円にて、大手不動産会社が競落していった。

 ちなみに、この競落会社が競売の申立人であるので、債権者の自己競落ということになる。不動産会社が申立人であるケースは珍しいが、これは、この会社が金融機関から債権譲渡を受けた上で行ったものである。

 先の中小企業金融円滑化法は来年3月に失効の予定であるが、それに伴い、総額が張る物件が、今以上に多くなるかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.