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東京競売ウォッチ

2011年1月24日

第75回2011年の競売市場

 先週まで2010年の東京地裁競売市場の分析を行ったが、今回は今年2011年の競売市場がどうなるのか、私見を述べさせていただく。

 まず、対象物件数について考えてみたい。10年は開札回数が1年計で30回であったが、今年は9月末までで20回が予定されており、通年では27回程度と、10年に比し、3回ほど少なくなる見込みである。

 今年期限を迎える中小企業金融安定化法について、延長が決まったこともあって、今後も競売物件の抑制効果は当分続くものと思われる。開札回数が削減され、対象物件数の減少することになれば、10年同様、落札競争が激しいだろう。昨年、競売市場をリードしたマンションだが、低金利住宅ローンや、住宅取得資金贈与といった実需マンション取引への追い風環境には変わりはないので、今年も引き続き入札を多く集めそうである。

 ただ昨年と違って、新築マンションの供給が首都圏で低グロス郊外物件を中心に約10%増加するとの見通しもあり、少し変化が生じそうだ。具体的には、新築供給が少ないエリアのマンションについては引き続き強気の入札が行われるものの、安い新築と競合しそうなエリアのマンションについては、やや入札競争が緩和する可能性があるということである。

 一方、商業用不動産については、依然賃料の弱含み傾向が続いており、今年も急激な市場回復は望めない様相である。

 そんな市況と、銀行の商業物件や、不動産会社への融資が厳しい状況が重なり、商業物件への入札が強気に転じることはないように思う。ただ商業用不動産市場は景気に敏感であるので、最近多くのエコノミストが述べているように11年、実際に景気回復が見えてくれば、今年中盤くらいから商業用不動産取引が活発化する可能性がある。

 となれば、競売市場の商業物件にも、入札がより集まる展開になるかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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