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東京競売ウォッチ

2012年7月24日

第145回 新宿ゴールデン街の店舗

 競売市場では、賃料収益取得目的の不動産も多く含まれる。そのうち店舗物件、とくに繁華性のある立地の物件に多くの入札が集まることもある。

 今年4月に京王井の頭線「浜田山」駅近くの1階区分所有店舗に入札43本が集まったことは、本欄で紹介した。そして7月5日開札で、これに次ぐ42本の入札を集め、この日の1番人気になったのも店舗物件であった。

 その物件は新宿区歌舞伎町1丁目花園神社に近接する「新宿ゴールデン街」内の長屋形式の土地付店舗であった。

 この物件の土地は約4.3坪、建物は昭和27年築の木造3階建てである。2~3階を1テナントが月額10.5万円にて賃借中。1階はテナントの存在が明確ではない状況である。

 おそらく、1階も賃貸すれば、月額8万円程度では賃貸できるだろうから、合計で年230万円ほどの賃料収入が見込めそうだ。

 このような内容のこの物件の売却基準価額は630万円であったが、これに対し、前述の大量入札があり、最高価1,828万円にて個人が落札していった。落札価格は取得経費や、年間保有経費など勘案して、実質利回り10%強確保の水準と考えられる。

 さて、この物件の立地する「新宿ゴールデン街」はかつて地上げが盛んに行われたことで有名になった。バブル経済の崩壊で、すっかり地上げ話はなくなったものの、将来の景気次第ではまた再開することもあろう。

 落札者としては、賃貸利回りも魅力であるが、将来の地上げ期待の余禄もあるのかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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