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スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2016年9月20日

第339回 縮小が続く競売市場の今後

 2016年も、ここまでのところ競売市場の縮小が続いており、先週本欄で述べたとおり、競落水準も高くなっている。さて、この傾向は今後どうなっていくか、占ってみたい。競売物件の供給源は不良債権である。そしてその不良債権は、会社や個人の経済的破綻により生じる。

 まずは企業の倒産件数を見てみる。こちらは帝国データバンクなどの統計では、リーマンショック後、ここ数年は減少傾向が顕著であり、今年に入ってもそれは続き、今年7月では5カ月間連続して前年同月比で減少を続けており、ここしばらくは企業の不良債権は増えないと思われる。

 一方で住宅ローン破綻による自己破産など、個人の不良債権の動向がわかる裁判所の破産受付数を見てみる。こちらも昨年までかなりのペースで減少してきており、個人の不良債権も減少してきたことがわかる。ところが今年2月を境に、この減少傾向が止まりつつある。今年6月の司法統計を見ると、1月からの6カ月間の累計件数がわずか(約1%)に増加した。

 ここから推量すると目先数カ月間、個人の不良債権は減少するが、その後下げ止まるということではないだろうか。

 また、次に弊社で集計している東京地裁本庁の配当要求数を見てみる。配当要求は競売の差押後、ほどなく裁判所が行うもので、半年後くらいの競売対象数につながる。つまり、競売対象物件数の先行指標と言える。

 こちらの方は昨年1年間が1,468件で、一昨年の1,714件から15%程度減少しており、これが目下のところの対象物件数の減少につながっている。

 しかし、この配当要求が今年6月に160件あり、約2年ぶりの数を記録した。こちらの方も下げ止まるかもしれない。

 以上から、筆者は競売の対象物件数は大きく増加はしないが、今年末くらいに減少傾向が転換する可能性ありと推測する。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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