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東京競売ウォッチ

2023年07月11日

第657回 バス便マンション低上乗せ競落

 首都圏の新築分譲マンション価格が1億円超えを続け、平成バブルを凌駕する状況に見える昨今である。しかし、あのバブル経済当時と違うのは、物件による差が大きいということだろう。平成バブルの頃はまさに不動産であれば押しなべて価格が上昇した。しかしこのところの不動産相場は地方では下落が続き、首都圏でも立地による差が大きくなっている。

 6月21日開札ではJR常磐線「金町」駅から約2.7㎞(バス12分バス停徒歩4分)に立地する築21年の3LDKで専有面積約22坪のマンションが対象になった。このマンションは準大手分譲で大手管理会社の管理であり、また水元公園も近く住環境は良好と思われる。しかし、開札結果は売却基準価額1742万円に対し、入札は5本に止まり、最高価1913万円弱と、売却基準価額に対す上乗せ率9.8%と低い水準で不動産会社が競落した。

 このマンション、中古市場における取引相場は専有面積1坪あたりおよそ120万円前後である。ただ今回の競落対象の部屋は1階部分であり、やや割安となると考えられることから2500万円程度の流通価格と思われる。

 ちなみにこの物件の滞納管理費等は10万円強と少ないことから先の競落価格であれば再販利益は対原価で10%超確保できるように思う。そもそも入札本数が一桁と言うのも少ない感じである。しかし、交通便が悪いというハンデが再販期間の長期化などの懸念を呼び、再販業者が入札を躊躇ったのではないだろうか。こんな競落結果を見るとかつてのバブル期との相違を感じる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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