リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2023年07月04日

第656回 土壌汚染リスクあるマンション

 土壌汚染調査はまずはその土地の従前用途である。鍍金工場やクリーニング工場などがその例である。更地の売買の場合には土壌改良などの必要性について売主、買主間の大きな交渉事項になる。

 さて6月21日開札の対象に東急田園都市線「桜新町」駅徒歩約6分に立地するマンションの1階路面の区分所有事務所が対象になったが、このマンションの敷地について土壌汚染の疑いがあるとのことである。おそらくは平成2年8月に建設された以前、何等か土壌汚染起こす可能性がある用途に供されていたのではないかと推察される。またこのマンションについては検査済証の交付が無く、建築基準法等に対する遵法性に疑義あり、ともされている。

 そんなことから本物件の売却基準価額計算において1割の減価が施され、対象建物は専有面積約14坪に対し、売却基準価額は1562万円であった。ただ本競売では無剰余取消を回避するため民事執行法第63条の2第1項の申出額として3555万円が設定されていた。この物件競落のためにはその額以上での入札を要する。土壌汚染の疑義もあり、且つ先の申出額もあるこの物件への入札は無いかと思われたが、結果は3本の入札があり、最高価4238万円強で競落されていった。建築済みマンションにおいて土壌汚染はさほど気にされないのだろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.