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東京競売ウォッチ

2014年11月11日

第254回 敷地利用権がない建物のみ

 10月23日開札では、期間入札公示後に14物件もの取下げがあった。開札直前に4分の1が消えたことになる。不動産市場が活況のときは任意売却も活発になる傾向を裏付けた格好だ。また、開札物件はすべて落札されたが、その中には敷地利用権が存しない建物のみの物件も2件あった。

 そのうちの1物件はJR京浜東北線「大森」駅徒歩約14分に立地する戸建てである。築33年の木造2階建て、延床面積約23.5坪ある。土地は東側で幅員約33mの公道(環状7号線)に面する約22.6坪である。

 しかし、この土地は今回の競売の対象になっておらず、「件外土地」の扱いである。競売対象になった建物の所有者とは親子関係(土地所有者が父)にあるが、借地権の設定などは一切なされておらず、無償で建物を所有し、占有している状況にある。こういった場合、競売では使用借権付建物となる。評価書では、所有権の建物敷地としての評価額の1割を当該権利(使用借権)分として評価している。

 競落者は土地所有者との間で競落後、敷地の利用権(借地権等)の新たなる設定、もしくは購入など協議せねばならないだろう。

 ところで、この土地の所有者(建物所有者の父)は既に他界しているが、その相続登記は行われていない。他界した土地所有者には建物所有者である子以外にも子がいるようで、敷地利用権等の交渉も簡単ではなさそうだ。

 こういった権利関係ではあるものの、売却基準価額231万円に対し入札が10本も集まり、最高価726万円にて競落された。競売市場の過熱化を表す競落例の一つと言えよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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