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東京競売ウォッチ

2016年6月21日

第327回 高い売却基準価額への上乗せ率

 競売市場の活性度を見る上で指標となるのが競落1物件あたりの入札本数であるが、これは5月24日開札では16.6本で過去最高水準である。さらに先週号の本欄でも紹介したとおり、競落価格の売却基準価額への上乗せ率も大きくなっている。非常に高い上乗せ率はビルなど、土地付建物に多く見られるが、マンションに関しても高い上乗せ率に驚かされる。

 5月24日開札では、JR総武本線「新小岩」駅徒歩約19分に立地する専有面積21坪弱の2LDK+サービスルームの部屋が入札30本入り、売却基準価額1,062万円のところ最高価2,386万円と、その2.24倍の水準で競落されていった。

 このマンションは築18年経過と、さほど古くはないものの、駅からの距離が遠く、決して至便とは言えない立地である。売買の成約事例をレインズで検索すると、おおよそ近い築年数、駅からの距離の物件は、成約の坪単価は120万円前後と思われる。となれば、先の競落物件の販売価格は2,500万円程度と推量される。したがって競落された価格水準では、販売のマージンが取れないように思える。

 また、この日は京成本線「お花茶屋」駅徒歩約7分に立地する専有面積18.3坪で、築18年弱の3LDKのマンションが開札対象であったが、こちらも売却基準価額1,154万円のところ、その2倍を優に超える2,510万円で落札された。

 このマンションは昨年10月に他の部屋の成約事例があり、それは坪単価で114万円程度であった。この水準で考えれば、先に落札されたマンションの相場は2,100万円弱になる。半年前の市場相場より高い価格での競落価格には驚かされる。競売市場の過熱ぶりを表す競落事例だろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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