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東京競売ウォッチ

2015年9月15日

第292回 1番人気は錦糸町の底地

 お盆休み明け最初の開札であった8月27日は、意外な物件が1番人気となった。

 それは借地権が設定されている底地である。当該底地はJR総武線「錦糸町」駅徒歩約7分に立地していて、東側で幅員11m、北側で幅員8mの各公道に面しており、広さは約22.3坪である。

 この土地には借地権が設定されており、木造の古家(平家建、延床面積約17坪)がその借地権に基づき建っている。

 また、この土地の相続路線価は1坪約126万円で、借地権割合は70%とあるので、この底地の相続税評価額は約840万円になる。これに対し売却基準価額は392万円で、相続税評価額の半分弱であった。結果は入札が59本集まり、最高価1,611万円にて個人が落札していった。

 相続税評価額の2倍程度の落札水準であったが、これはおそらく借地権者が借地権を処分するとみての入札であろう。というのも借地権者は老齢で介護施設に入っていて、対象地には住んでいない。さらに借地権者には後見人(息子)が付いている状況にある。このような事実から、早期処分が予想されたのであろう。ちなみに、この底地の地代は月額13,400円で、固定資産税等を控除した実収入は年間約9万円であるので、利回りを計算すれば、競落価格では年0.5%程度にしかならない。

 人気エリアの角地で、しかも容積率300%の好条件であったことがあるが、底地が一番人気になるというのは売物件の供給不足である市場の有様を表しているとも言えよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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