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東京競売ウォッチ

2012年7月10日

第143回 大森海岸のマンション

 中古マンションの成約価格が低下しているとの報道もある中、東京地裁本庁の6月21日開札では、中古マンションが30本の入札を集め、1番人気であった。

 その物件は京浜急行線「大森海岸」駅徒歩約6分に立地し、築28年のマンション内の専有面積約16.5坪の3DKの部屋である。所有者占有であるが、ガス供給が停止されているなど、空家のような状況である。

 この物件の売却基準価額は724万円であったが、これに対し、最高価1,637万円強で落札されていった。大量入札、かつ売却基準価額の約2.26倍という、高い上乗せ率での競落であったのは、空家同然で占有排除に時間を要さないことが影響していよう。

 ところで、この物件には多額の滞納管理費がある。総額で130万円近く、4年間以上支払われていない。さらに、この滞納管理費の回収につき、弁護士に管理組合が依頼したらしく、その費用30万円(別途遅延損害あり)が現況調査報告書に買受人が支払いを要する費用として記載されている。評価書においても、計算過程から類推するに、買受人が負担する前提で売却基準価額が設定されている。

 区分所有法7条には、管理組合は「規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権」については、債務者の区分所有権等に先取特権を有するとある。

 この弁護士費用も、これに従って集会決議によって債務者負担としたのだろう。その結果、買受人の承継債務として扱われるのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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