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東京競売ウォッチ

2022年10月4日

第619回 広尾の借地権マンションに入札6本

 9月14日開札では旧法借地権に基づく土地賃借権の準共有で建っているマンションが開札対象となった。このマンションは東京メトロ日比谷線「広尾」駅徒歩約6分と好立地である。対象物件は築約41年を経過する旧耐震構造と思われ、専有面積約16坪の2LDKである。このマンションの地主は今年1月に変更(所有権移転)されていて、当該地主は地代滞納を名目に賃借権解除の意思表示を示している。ただ滞納額は月額地代(6500円)の数か月分であり、契約解除は裁判では認められないだろう。それもあってこの物件の評価額設定にあたり賃借権の減価はなされていない。

 もっとも区分マンションの賃借権は解除されたとしてもその部屋だけの取壊しは不可能である。結果として地主が借地人である区分建物を引き取ることになるだろう。本件はこの競売にて新たな区分所有者になるが、もし地主の譲渡承諾が得られない場合は、おそらく無断譲渡扱いで競落者が建物買取請求ができるようにも思う。ただ実際には、地主が任意で買い取りを提案するか、譲渡承諾料を得て賃借権譲渡を認めることになりそうだ。

 いずれにしろ上記の地主との交渉など競落後の不確定要素が大きいところから、好立地にも拘わらず入札は6本であった。結果は売却基準価額1238万円に対し最高価2030万円にて競落されていった。もしかすると競落者は地主名義ではないが、地主の関係者である可能性もありそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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