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東京競売ウォッチ

2017年2月14日

第357回 豊洲新市場の地下水汚染問題

 豊洲新市場の地下水にベンゼン他高濃度有害物質が含まれているとの調査結果は多くの波紋を呼んでいる。もしこの地下水汚染問題が解決することがなければ、新市場移転の問題だけではなく、豊洲地域に対する土地の見方も変わるおそれがある。豊洲には多くのマンションが建てられており、その中には人気が高い複数のタワーマンションも含まれる。これらのマンションの資産価値には、この汚染地下水問題はどう影響するだろうか。

 1月19日開札では、東京メトロ有楽町線「豊洲」駅徒歩約4分に立地する「東京フロントコート」というマンションの最上階の部屋が対象となった。

 このマンション、築22年目で対象となる部屋は南西向きの専有面積約26坪である。この物件の売却基準価額は3,792万円であったが、これに対し、31本の入札があり、最高価6,388万円で競落されていった。専有面積坪単価で245万円強の競落であった。

 さて、一般市場では同じマンションの最上階の部屋が専有面積坪単価約280万円弱で販売されており、一連の汚染問題に影響されていない感じがする。この例からすると、競落者が再販する場合7,000万円超での売り出し価格になろう。とすれば、内装費用の他、滞納管理費(約25万円)、登録免許税や不動産取得税などの取得コストを考慮しても、先の競落水準は5%以上のマージンが取れる算段である。

 しかし今後、地下水汚染問題により市場価格が影響されることがないだろうか。地下水汚染は実際には健康被害などが生じるおそれはないように思うが、いわゆる風評として、このエリアに対するダメージが生じる可能性は否めない。

 地下水汚染の検査の行方は不動産関係者も注視している。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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