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東京競売ウォッチ

2015年3月24日

第270回 接道義務を満たさない物件

 競売不動産の中には、建築基準法上の接道義務を満たさない物件も散見される。こういった無道路地は売却基準価額が安いが、入札数が限られる。では、売却基準価額がどの程度低くなるのであろうか。

 前回2月26日開札では、江戸川区で無道路地の土地付一戸建て(都営新宿線「瑞江」駅徒歩約11分)が開札対象であったが、この物件の評価書を見ると無道路地である減価は40%になっている。これだけの減価があっても、入札は3本に止まり、売却基準価額にわずかに上乗せされた価格で落札された。

 しかし、例外もある。それは京成本線「京成関屋」駅徒歩約1分に立地する鉄骨造の居宅兼店舗である。この物件の競売対象は土地が約19坪で、建物が延床面積約40坪(築約48年)であるが、この建物の敷地の一部分(約12坪)が競売対象外の土地であった。しかも、この競売対象外の土地を経由しなければ道路から出入りができないので、いわゆる無道路地状態である。しかし、この物件には入札が35本入り、落札価格は3,157万円と、売却基準価額814万円の4倍近い水準であった。

 無道路地であることから、先の物件のように土地については約40%の減価がなされているものの、そんな配慮をよそに高い水準の競落がなされた。その理由は道路(区道)との接続の土地が東京都の所有であり、当該土地を都から買受けできる見通しがあることにある。都から当該土地を購入できれば、接道条件が満たされ、一気に価値が上昇する。落札者はそこを見据えての入札価格設定であったのだろう。

 この競落事例は、財務省が底地所有者である借地権付建物に入札が多く集まるのと、ある意味似ている。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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