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東京競売ウォッチ

2013年11月26日

第207回 神田駅歩2分の雑居ビル

 11月8日開札では、今年1番の大量74本もの入札が集まった物件が登場した。

 その物件はJR山手線「神田」駅徒歩約2分に立地する雑居ビルである。土地は南東側で幅員10mの公道に面した26坪強で、建物は鉄筋コンクリート造7階建て、延床面積約195坪である。この建物は昭和34年築であるが、昭和41年に改築している。そこから数えても築47年を経過している古いビルである。

 現テナントは、繁華性の高い好立地であり、飲食店など店舗が中心である。また2フロアを除いた他全部分のテナントは、買受人に対抗できる最先の賃借権者で、長期間安定的に営業を継続している。

 さてこの物件、年間賃料収入約2,000万円は見込める物件であるが、その売却基準価額は3,642万円であった。何と売却基準価額ベースでは年約55%の利回りになる。これでは大量入札になるのも頷ける。

 もっとも、現賃借人の所有者への預かり敷金の債務承継額が約2,070万円ある。ただ、これを勘案したとしても、かなりの高利回りである。

 しかし、実際の競落価格は売却基準価額の6倍を超える2億3,220万円という高額で、法人が落札していった。この競落価格は路線価等から算出される銀行等の推定担保評価額を大きく上回っているので、競落者には特別な事情があったのだろう。

 それにしても、このような古ビルにこれだけの入札が入るということは、世間のインフレ期待が高まっている証左であろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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