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東京競売ウォッチ

2011年11月1日

第112回 代官山東急アパート

 震災以降、マンションに関しては、建築基準法の1981年の改正以前の建物(旧耐震構造)か、それ以降建築の建物(新耐震構造)かが話題になることが多い。競売マンションの人気は相変わらず高いのであるが、やはり旧耐震構造マンションには入札が比較的少なく、売却基準価額に対する上乗せ率も低い。

 10月6日開札でも、12部屋の旧耐震構造マンションが対象になったが、すべて競落されているものの、入札本数は1部屋を除き4本以下で、概ねは1~2本という結果である。

 ただ1物件だけ入札が9本あり、かつ売却基準価額の2倍を超えるものがあった。それは東急東横線「代官山」駅徒歩1分に立地する「代官山東急アパートアネックス」である。

 この物件は1959年建築と築50年を優に超えている。まさに日本における草創期のマンションである。

 しかも、このマンションの敷地利用権は使用借権である。したがって、評価書においては敷地利用権の評価は所有権の20%に設定されており、それに基づき、売却基準価額が設定されている。

 結果、売却基準価額1,280万円に対し、入札9本で、競落価格は3,180万円であった。まさに古い物件であることや、使用借権の土地であることを感じさせない競落結果であったが、これは一つに、人気のある駅の至近という抜群の立地にあることがあろう。しかし、耐震工事を終えていることや、敷地の所有者が東急不動産であるという安心感が、積極的な入札を促した面も否めない。

 ただし、この物件、本年5月に1回入札16本を集め、3,459万円で、競落されている。代金不納付により、今回再入札になったようだ。前回は高値を追求しすぎて採算に合わないと、判断されたのかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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