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東京競売ウォッチ

2022年3月1日

第591回 借地権付建物の共有持分も落札!!

 競売不動産の減少で、複雑な権利関係の物件にも果敢に応札をする業者が現れています。2月9日開札ではJR京浜東北線「東十条」駅徒歩約5分に所在する借地権付建物の3分の1の共有持分が開札対象になった。土地は西側で42条2項道路に面する約23坪でその土地上の対象の建物は昭和26年築の古家である。競売に付されたのはこの建物の共有持分3分の1であった。

 地主は個人で、借地権につき賃貸借契約の解除を主張している。地主の申出では滞納地代が500万円を超えていて、これが事実であれば30年以上地代不払いが続いており、この点だけでも解除要件にあたる。ところがこんな物件でも売却基準価額は101万円ついていて、さすがに入札は無いかと思われた。

 しかし結果は1本の入札があり、300万円にて競落されたのである。申立て債権者は都銀系のサービサー会社であり、おそらくはカードローンの延滞債権であろう。このまま競落者が代金納付をすれば、当該サービサーは安堵するだろう。ただ今後競落者が地主と賃貸借契約の締結について、また他の共有者と共有関係の解消などについて交渉する過程で代金納付をするかどうか分からないように思う。

 競落者としては他の共有者から共有持分を買い取り、併せて地主に土地賃貸借契約締結を考えているとは思うが、なかなかハードルが高そうだ。これほど権利関係が複雑な物件でも競落されるほど競落競争が激しい競売市場である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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