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東京競売ウォッチ

2021年12月14日

第581回 駅近商業ビルに入札47本!!

 競売市場が縮小しているところで商業ビルの対象物件は僅かにしか目に触れない。そんな中12月2日開札では都営新宿線「一之江」駅徒歩1分に所在する商業ビルがこの日1番の入札本数を集めた。駅の出口からほどなく、商業ビルとしては好立地で、道路付けも幅員約12mの街道に面している。土地の広さは約33坪、建物は昭和25年に建築されたところへ昭和43年に増築が施された木造2階建てである。総床面積は52坪弱あり、1階は所有者の親戚が経営する不動産会社などが使用し2階が飲食店になっている。

 この物件の売却基準価額は3104万円であったが、これに47本の入札が集まり、最高価1億1340万円強にて個人が落札していった。この落札価格は実質土地代分であるので落札者はこの対象物件の土地を1坪343万円強で取得したことになる。ちなみにこの対象物件の正面路線価は1坪112万円(令和3年分)であるので相続税評価額の3倍強の落札と言うことになる。かなり強気の入札とも思われるが、現状のマーケットでは考えられる水準かもしれない。

 さて、あとこのビルの占有者で抵当権設定以前からの賃借人は先に記した物件所有者及び債務者の親戚が経営する不動産会社である。物件明細書ではこの不動産会社の賃借権を存否不明としていながらも認める前提での売却基準価額設定と記している。この点明渡交渉では競落人にとっては、やや障害になるかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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