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東京競売ウォッチ

2022年11月15日

第625回 訳ありマンション売却基準価額未満落札

 自殺があった部屋など不審死のあった物件には心理的瑕疵を認め、売却基準価額を一定程度減じる。しかし死亡場所が不明であればそのような減価は行われない。

 10月26日開札ではJR常磐線「亀有」駅徒歩16分に所在する築35年専有面積約10坪の1DKの部屋が対象になった。そのマンションは3年前の賃借人が死亡し、所有者が親族に連絡が繋がらず、 亡くなった方の家財道具が残置されている状況である。所有者はその後破産し、破産管財人によっても残置物の処理は為されぬままであった。それから破産事件は終結し、現在は所有者の占有となっている。

 インターネットの事故物件サイトにも掲載されておらず事故物件扱いではないものの、競落後の家財に処分については一時保管の上、引き取りの通知などは必要かと思われる。そんないわば訳ありではあるが評価書においては減額がなされていない。

 そして結果は売却基準価額507万円に対し、入札は3本で、最高価は売却基準価額を下回る424万円強であった。買受可能価額を僅かに上回る低額競落であったのは前述の訳ありの原因もあるが、所在階が1階で、間口が狭小な間取りであったことも影響しているように思う。ちなみに破産事件が終結していると、破産管財人との明渡交渉はできず、あくまで所有者本人となる。こういった場合所有者本人に連絡がつきづらいことも予想され競落後の処理にその点でも苦労しそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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