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東京競売ウォッチ

2017年10月17日

第388回 廃屋借地権物件、特売に回るも即応札される

 売れ行き絶好調の競売市場であるが、稀に期間入札で入札が入らない物件もある。

 9月21日開札では、東急大井町線「荏原町」駅徒歩約4分に立地する借地権付建物に応札が無く特別売却に回った。借地の面積は約11.4坪と狭小ではあるが、北東側で幅員6.5mの公道に面しており、近隣商業地域に属し、店舗需要も見込める立地である。

 ところで問題はこの借地権付建物の借地権について、更新料未支払などによって地主の方が平成23年5月に契約を解除し、消滅していると主張していることである。これに対し、債権者は借地権が存続しているとし、裁判所の許可を得て、地代の代払いも行っている。裁判所の評価書によれば、この借地権の係争があることから、3割の減価がなされている。

 建物は築49年の木造2階建であるが、廃屋のような状態である。この物件の買受人は地主から名義変更承諾とともに建替え、もしくは改築の承諾も取り付けねばならないだろう。よって売却基準価額618万円であったもののこういったリスクを嫌って応札者が無かったと思われる。しかし、特別売却に回ると程なく応札された。地主に任意で名義変更や改築等の承諾は得にくいところではあるが、買受人としては最悪裁判所の代諾許可を取ることも視野に入れたのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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