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東京競売ウォッチ

2021年10月26日

第574回 借地権戸建に入札12本!!

 借地権建物の競売物件の入札の難しさは地主がどういう考えなのか、推し量れないところにある。競落後に地主と話し、土地を売却してくれるか、してくれるとしてそれは幾らか。売却しないとした場合に、新たな土地賃貸借契約を締結するにあたり譲渡承諾の条件はどうなるのか。(譲渡承諾料や地代)所有権物件と同様に建物の明渡しについても考えなければならない。

 そんなことがあり、借地権物件への入札は比較的少ないのが通常である。そんな中、10月6日開札では12本もの入札があった借地権物件があった。その物件は東京メトロ半蔵門線「清澄白河」駅徒歩約6分に立地する戸建であった。土地は南側で幅員6mの公道に面する約30坪で地代は月額29160円である。借地期間は30年で残存期間は26年である。建物は鉄骨造4階建で延床面積は約48坪の5LDKである。

 この内容で売却基準価額が2381万円であったが、これに対し入札が12本あり、最高価3429万円弱で競落されていった。売却基準価額に対し44%の上乗せ率であり、借地権物件としては高い水準である。地主が底地売却に高すぎない価格条件で応じてくれれば、再販利益がまずまず得られるが、売却に応じない場合は、借地権での商品化となる。譲渡承諾料(評価書上は320万円弱)や賃貸借契約期間の再設定など交渉して決定しなければならないことは多々生じる。それでも多くの入札を集めたところを見ると再販業者にとって事業用物件が不足気味なのであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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