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東京競売ウォッチ

2016年7月12日

第330回 芝浦のタワーマンション

 競売市場の活性化は続き、6月23日開札も100%の競落結果であった。競落水準も高止まりの状態ではあるが、少し変化を感じる競落結果も出てきた。それは、昨今の都心不動産価格上昇の象徴とも言えるタワーマンションの競落結果である。

 この日、JR山手線「田町」駅徒歩約11分に立地する築10年弱の「芝浦アイランドケープタワー」の住戸が開札になった。対象住戸は48階建ての39階に位置し、専有面積約31.6坪の2LDKである。この部屋の売却基準価額は6,413万円であったが、これに対し18本の入札があり、最高価8,303万円にて競落されていった。売却基準価額の3割弱の上乗せで、専有面積坪単価約262万円であった。

 実は今年5月に同じマンション棟内に坪単価350万円を超える成約事例があった。また6月9日開札では同マンションの別棟の部屋が売却基準価額に対する上乗せ率50%超にて競落されている。これらを考えると先の競落水準は低いように感じる。

 ただこの物件には、抵当権設定前の最先の賃借権者がいた(ただし、その賃借権は定期借家権であり、4年後には明渡が請求できる)。これが競落水準を抑えたのかもしれない。

 4年間、月額31万円で賃貸継続ならず、確かに利回りとして魅力は薄い。ただそれだけではなく、先行き、それも4年後の相場を再販業者が強気に見られなくなった、ということかもしれない。ちなみに、この部屋の競落者は個人であった。競売市場にやや弱気な姿勢が見えてきた気がする。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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