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東京競売ウォッチ

2023年10月10日

第669回 住宅ローン不正利用の末路

 このところたびたびマスコミで取り上げられている住宅ローン、フラット35の不正利用の事件だが、現在も競売市場では毎回のようにその処理案件が出てきている。9月27日開札では都営浅草線「馬込」駅徒歩約8分に立地する築43年の専有面積約13坪の2DKのマンションが競売対象になった。このマンションがまさにフラット35不正利用物件で、今般競売となったものだ。平成30年9月に現所有者が自己居住用としてフラット35を利用して購入し、その後すぐに現占有者が占有している。当該占有者はサブリースで、マスターリースの会社が借り上げたところを転借したものだ。マスターリースの月額は92700円で、占有者である転借人は共益費込みの103000円を負担している。

 このマンションの登記情報を見ると5年前現所有者が購入した時の債務額は3900万円である。今般売却基準価額1268万円に対し最高価1681万円強で落札されたところを見ると、現所有者は2000万円を優に超える残債を負うことになる。フラット35不正利用で購入後わずか5年後に多額の借金が残った形である。購入時に相場よりかなり高い価格でマンションを買わされたのが、この悲劇の一番大きな原因である。さらにサブリース業者も不正利用を知って借り上げていた可能性を否めない。マンション販売会社やサブリース会社は各々通常の契約であるので法的責任は問われない可能性が高いが、少なくとも道義的責任はあるように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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