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東京競売ウォッチ

2014年9月9日

第245回 人形町の借地権付建物に入札17本

 借地権付建物についての競売不動産は、所有権物件に比し、入札が少ない。借地権の評価は所有権物件より低く、流動性を欠くからである。

 しかし、底地権者が財務省であると、底地権の買取が可能であることから、所有権物件に近い人気がある。また、底地権者が個人であるよりも、法人である物件の方が競落後の借地契約の名義変更手続きや、将来の売却などでも手続きが円滑であると見て、応札も多い。

 ちなみに、底地権者が個人であると、相続が発生することによって複数の名義になることがある。それによって、借地権の売却の場合の承諾意思が取りづらくなることや、建替えの承諾を得にくいといったことが生ずる可能性がある。

 8月7日開札では、東京メトロ日比谷線「人形町」駅徒歩約4分に立地する借地権付建物に17本の入札が集まった。

 この物件、売却基準価額1億2,442万円という高額であるにもかかわらず大量入札であった。これは、この物件が日本橋小網町という好立地であったこと、そして建物が鉄骨鉄筋コンクリート造の築22年で当分、賃貸運用ができることなどが要因であろう。年間収益は支払地代を考慮しても2,000万円は見込め、売却基準価額から見ると、かなりの高利回りである。

 結果、競落価格は2億2,700万円であったが、これは名義変更料(評価書では約1,500万円)などを考慮すると、2億5,000万円程度の総取得費用となり、年利回り8%水準である。

 借地権付建物としては、さほど高い利回りには思えないが、先にも述べた立地の魅力が大きいのだろう。加えて底地権者が安田不動産という老舗であり(江戸時代からの地主である)、名義変更や将来の不安定要素が少ないということも、入札を誘因したものと考えられる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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