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東京競売ウォッチ

2013年8月6日

第192回 競落マンションの上乗せ率

 マンションへの入札価格水準はこの半年でかなり高くなってきている。2013年上半期における競落マンションの売却基準価額に対する競落価格の上乗せ率は平均で約60%であった。昨年1年間の平均が41%強であったので、半年で1・5割ほど競落水準が上昇した計算である。

 そんな中、7月11日開札では、都営大江戸線「新御徒町」駅徒歩約5分に立地するマンションが170%近い上乗せ率で競落されていった。

 その物件は築30年で、専有面積約13坪の2DKの部屋であった。売却基準価額は548万円であったが、これに対し40本の入札があり、最高価1458万円にて再販業者が落札していった。

 ちなみに、この物件と同じマンション内の別の部屋が現在売りに出されている。そして、その部屋の販売価格は専有面積12・42坪で1680万円となっており、専有面積坪単価は約135万円である。

 先の競落された部屋の再販価格を同等の販売単価で考えるなら、1700万円台の中盤といったところであろう。一方で競落価格に滞納管理費(約40万円)、登録免許税などを考慮すると、取得原価は1500万円を優に超えてくる。

 さらに再販にあたって、別に内装費や仲介手数料などを要すると考えると、粗利は対原価7%以下の100万円程度しか得られない計算になる。

 本物件の占有者は所有者・債務者の義理の両親で、使用借権者の位置づけである。したがって、代金納付後から早い時期に明渡を終え、商品化できるとは思われるが、もし明渡交渉が難航するなどして、コストが嵩めば、収支はなお一層厳しくなろう。

 いずれにしろ、強気の入札価格設定でなければ、競落は覚束ない状況にある。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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