リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2016年12月13日

第350回 北綾瀬の専有20坪のマンション

 高い競落率が続く競売市場であるが、ごく少数ではあるが入札がない物件もある。11月8日開札では、所有者居住のマンション1物件だけが、入札なく、特別売却に回った。

 その物件は、東京メトロ千代田線「北綾瀬」駅徒歩約11分に立地する築27年のマンションである。専有面積約20坪の3LDKの部屋で、売却基準価額が884万円であった。入札できる最低線は売却基準価額の80%相当である買受可能価額であるが、この物件の場合は707.2万円になる。しかし、この日には入札ゼロの結果であった。実はこの物件、今年6月2日開札で2本の入札があり、1,020万円にて競落されたのであるが、代金不納付で再入札になった経緯がある。

 マンション市場活況と言われる中で、代金不納付、そして入札なしとなったのはどうしてだろう。そこで、レインズ上の販売物件の登録状況を見てみる。すると同程度の築年で「北綾瀬」徒歩10分程度では、専有面積坪単価約90万円で販売されている。本物件に当てはめれば1,700万~1,800万円程度が販売価格になろう。したがって、1,020万円での落札であれば、十分再販利益が確保できそうである。

 なぜ代金不納付であったか、その原因は滞納管理費等にあったのだろうか。現況調査報告書によると300万円を超える滞納管理費等があるので1,020万円での競落であると、取得総コストは、登録免許税、不動産取得税、そして内装関係費用までを考慮すると、1,500万円近くにはなる。それでもまだ原価は回収できそうに思うが、ここで6月の競落者は入札保証金180万円弱を放棄し、代金不納付を選択している。総戸数13戸と小さいこともあって、市場競争力がないと判断したのかもしれない。

 ちなみに、このマンションは特別売却に回って、すぐに入札があり競落された。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.