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東京競売ウォッチ

2009年9月14日

第8回 高利回りな特殊物件

 競売には時折、特殊物件が顔を見せるが、8月27日開札では立体駐車場が開札対象になった。

 それは地下鉄日比谷線「築地」駅徒歩2分に立地する「セントラル東銀座」という総戸数200戸超のマンションの付属施設である。 32台収容できるこの駐車場は全て月極として貸し出されているようだ。事件記録によれば、そのうち19台が賃貸中で 1台平均5万円程度が賃料とのことである。

 本物件を仮に1台月額5万円の料金で満車状態にすると、売上げは月額160万円で、管理費等(月額14万円弱)および年額33万円の 固定資産税等を差し引くと、年収は1,700万円を超えることになる。本物件の売却基準価額は3,503万円であるので、単純に 年50%近い利回り水準も望めることになる。

 しかし、現実には立体駐車場には、電気代や保守費用など多額の維持コストを要することが想像される。また、機械設備の将来の 改修費用も見込まれよう。問題はこれらのコストが通常では読みきれないので、一体どれくらいの純収益が得られるのかがわからないことである。 さらに、賃料や稼働率についての予測も住宅より難しい。

 結局、この物件は入札5本の末、4,613万円にて落札されたが、落札者は不動産業者ではないようであり、おそらくこの辺の収益構造に 明るい会社ではないかと思われる。

 この日、同じく特殊物件と言える物件が今年2回目の入札でようやく落札されたが、それは有楽町線「江戸川橋」駅徒歩8分に立地する マンションの1階にある自動車修理工場と、その付属事務所であった。

 専有面積が計70坪はあるが、前回(4月)は5,000万円強の売却基準価額で不落札の結果であったところ、今回、価額見直し再入札で、 買受可能価額(3,209万円)を少し上回る3,510万円にて落札された。特殊物件の応札は難しいが、逆にチャンスもありそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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