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東京競売ウォッチ

2023年10月03日

第668回 分有私道の掘削承諾に注意

 建物建設については、上水道、下水道そしてガス管について宅地内への引き込みを要する。その際接面道路について掘削工事が必要になるが、このときその道路が公道であれば、道路法に基づく掘削許可申請を行うことで円滑にできる。しかし、私道の場合は私道の所有者に掘削同意書を求めねばならない。当該私道の所有者全員を基本的に取得しなければならない。この掘削同意について私道が共有の場合は、先般の民法改正により共有者の過半の承諾にて掘削が可能となった。しかし、その私道が分有状態で、単独所有の土地数筆からなっている場合は、やはりその私道土地所有者全員の掘削承諾を必要とする。

 9月13日開札では京王線「八幡山」駅徒歩約11分に立地する更地が競売対象になった。この土地の面積は約22坪でこれに付随して約6坪の私道が対象である。この私道は位置指定道路であるので通行に支障は無い。しかし水道管などの引き込みのための掘削同意は分有状態である他の私道土地4筆の所有者から取得しなければいけない。

 この土地は今年4月26日に1度売却基準価額2628万円に対し16本の入札の末、最高価5025万円で競落されていたが、今般再入札になった。推測であるが、私道所有者の掘削承諾を取れない私道土地所有者がいたのではないだろうか。そこで代金納付をせず購入を断念した可能性がある。9月13日再度の入札で8本の入札があり最高価3801万円にて競落された。この競落価格であれば、掘削承諾を得られない所有者に対し、裁判にて決着をつける時間と費用を賄えると思われる。分有私道面の物件は取得に注意を要する。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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