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東京競売ウォッチ

2023年07月25日

第659回 区分所有法第59条競売マンション

 マンションの管理組合の抱える悩みの上位に滞納管理費等の問題がある。幾度となく請求しても支払われず、結局法的な措置を講ずることになることも多々ある。7月12日開札では東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅徒歩約6分に立地する築13年の1LDK 、専有面積約12.5坪の部屋が対象になった。この競売の申立債権者は管理組合であり、ケ事件の競売となっている。この競売の現況調査報告書を見ると約5年間の管理費等の滞納がある。管理組合としては滞納を確認して5年経過し債権が消滅時効に掛かることを避けることから競売に踏み切ったと思われる。但しこの部屋には多額の債務に基づく金融機関の抵当権が設定されていることから管理組合は(滞納管理費等の)先取特権を行使しての競売を掛けられなかったようだ。従って区分所有法第59条により、管理組合総会の議決を経て裁判の判決をもって競売に付したと思われる。故にケ事件なのであろう。

 また現況調査報告書を見ると債務者は執行官の現況調査に際し、非協力的で、警察まで呼び付ける有様であった。管理組合との確執もかなり根深いものであったのだろう。この物件、売却基準価額2440万円に対し9本の入札があり、最高価3868万円にて競落された。おそらく競落後の明渡交渉はかなり大変ではないだろうか。明渡強制執行の催告くらいは必要かもしれない。二桁の入札本数に届かなかったのを見ると現況調査報告書の債務者の対応についての記載を見て入札を見送った方も結構いたのではないだろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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