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東京競売ウォッチ

2013年7月23日

第190回 借地物件にも活況が及ぶ

 借地権付建物は競売では入札本数が限られる。これは、競落した後、土地所有者に対し、土地賃貸借契約の譲渡許可を競落人自ら行わねばならない上、その譲渡許可条件が、どのようなものか、あらかじめ不明であることが大きな原因であろう。

 そういう意味では、借地権付建物の中でも、財務省が底地を所有している場合は、あらかじめ譲渡許可条件を聞き出せるところから、入札本数は多くなる。さらに財務省が底地所有の場合には、路線価をベースに所有権の買取にも応じてくれる。ちなみの財務省が底地所有者の場合は底地の物納がなされたということである。

 そういうところで、6月25日に借地権付建物に12本もの入札があったのに目を引かれた。

 その物件は都営新宿線「西大島」駅徒歩約9分に立地し、借地の面積は約32坪で、東側で幅員約9mの公道に面している。

 建物は築40年近い鉄骨造で、延床面積約74坪で、間取りが10DK+倉庫と大きい。しかし、この物件を商品と考えるなら、建替えが前提になるであろう。

 建替えとなれば、名義変更料のほかに、建替えの承諾を得るべく、地主に別途承諾料を支払わねばならないだろう。買受人が建替えるとすれば、譲渡承諾料約230万円(評価書の査定額)に加え、ほぼ同額の建替え承諾料が必要と考えられる。

 こういった付帯費用が想定できるところで、競落価格は2,222万円であった。これは売却基準価額1,277万円に対し約74%の上乗せであり、借地権付建物としては、高い水準だと言えよう。

 ちなみに2,200万円の次順位入札があったところから、決して競落価格が突出した値付けではないように思われる。競売市場の活況が借地物件にも及んできたようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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