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東京競売ウォッチ

2025年06月10日

第747回 アベノミクス前の2.5倍 人形町マンション

 5月28日開札の対象物件は近時ではおそらく最少となる14物件で、東京地裁とは思えぬ数の少なさに驚かされた。そんな中この日一番人気であったのが都営浅草線「人形町」駅至近の専有面積12.2坪の1Kのマンションである。

 このマンション築26年と決して新しくはないが、売却基準価額2848万円に対して入札26本が集まり、最高価5011万円にて再販業者が落札していった。競落価格の専有面積坪単価は453万円(登記簿面積ベース)となる。ちなみにこのマンションの別の部屋が13年前、アベノミクスが始まる半年ほど以前に競落されている。その部屋の競落価格の専有面積坪単価は184万円(登記簿面積ベース)であり、今回の競落価格は、その約2.46倍である。築年は13年経過し古くなったのにも拘わらずこれだけの値上がりを見せたのには改めて驚かされる。

 このマンションは相続による相続人3人の共有物件で、共有物分割請求裁判に由来する競売と思われる。3人の相続人は、その相続分割後円滑なる換金分配が進まず時間が経過し結果として競売になったのだろう。しかし、その時間が掛かってしまった分、結果的には各相続人の取り分が値上がりによって増加すると言う皮肉な結果となった。

 これだけの値上がりを見せるマンションなので、住宅ローン返済不能による競売はかなり生じにくく、対象物件の減少の要因となっている。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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