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東京競売ウォッチ

2017年3月21日

第362回 八丁堀の築50年、事務所ビル

 2020年東京オリンピックに向け、宿泊施設の不足が喧伝され、東京の交通至便な立地に存する古ビルは、ホテルへの建替え転用が多く検討されている。しかし、多くの古ビルにはテナントが占有していることが多く、それらテナントの明渡に関する時間やコストが読めず、転用が進まぬことが多い。

 そこへゆくと競売市場の古ビルでは、占有者の賃借権が買受人に対抗できない場合が多々あり、通常売買より競売の方が、建替え、転用に好都合のことがある。

 2月23日開札では、東京メトロ日比谷線「八丁堀」駅徒歩約2分に立地する築50年の事務所ビルが競売になり、ホテル会社が競落していった。そのビルは土地が約90坪、建物は鉄骨鉄筋コンクリート造8階建て、延床面積が約580坪ある。

 賃借人のうち1社を除いては、買受人が代金を納付してから6カ月の明渡猶予期間があるものの、その後、引渡命令が発令する立場の賃借人である。そして残りの1社は、平成16年3月31日以前に入居した、旧民法395条の短期賃借権者であり、あと1年強の期限後には買受人に明渡をしなければならない立場である。

 また賃借人のいないフロアは所有者占有であるので、言うまでもなく、すぐにでも買受人は明渡を請求できる。通常売買の場合、25件を超えるテナントに対し、任意の明渡交渉をしなければならない。

 結果は、売却基準価額4億864万円のところ、入札15本が集まり、先述の通りホテル会社が11億1,200万円にて落札していった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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