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東京競売ウォッチ

2023年03月14日

第641回 法定地上権付建物の競売の背景

 法定地上権付建物は競売によってそもそも土地、建物が同一所有者であったものが、建物だけが競落され、別の所有者になってしまった場合である。競落者は土地に対し物権である地上権を土地所有者に主張でき、土地への地上権登記を要請できる。また売買についても土地所有者の承諾無しに自由に行うことも可能である。

 一般市場では見られないこの法定地上権付建物は競売においてたまに登場することがあるが、その発生原因の多くが「超過売却」にある。つまり競売で回収される債権に比し、差押えの上売却される不動産価値が上回る場合で、土地を除いた建物だけを競売にすると言うものである。

 2月17日開札で東急大井町線「九品仏」駅徒歩約9分に立地する一戸建てがこの法定地上権付建物であった。この一戸建ては土地建物が相続により所有権移転され、その際建物建設した時の借入も併せて相続された。その後その借入が滞るとともに相続税も延滞となり、今般競売になったところで競売のための評価をした際、超過売却であることで土地を除き建物(+法定地上権)が競売対象になった。法定地上権対象の土地は公道面の約41坪、建物は2LDK2戸の共同住宅(延約37坪)で築34年が経過している。この物件の売却基準価額は3691万円であったが、これに対し入札16本が集まり、最高価7222万円にて不動産会社が落札していった。今後競落会社は土地所有者に対し、土地(底地)購入をするべく交渉をすることになろう。こういった権利関係の物件でも好立地であると多くの入札が集まり高水準にて競落されるのも現在の好調な市場が背景にあるのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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