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東京競売ウォッチ

2013年10月29日

第203回 西大島の築浅マンション

 中古マンション相場が上昇基調になっているとの新聞報道が目につくようになった。東京地裁、競売市場でも築浅マンションの上乗せ率が大きくなっている。

 10月3日開札では築浅マンションが40本の大量入札を集め、1番人気になった。その物件は、都営新宿線「西大島」駅徒歩約9分に立地し、築8年で、専有面積約24坪の3LDKの部屋である。

 この物件、売却基準価額1,949万円に対し、最高価4,180万円にて業者が落札していった。落札価格の上乗せ率は約114%とかなり高い。ちなみに、レインズの売却物件情報を見てみると、条件が近い他の物件の売値は先の落札水準に近い。

 さらに、同じ日に開札となった、JR総武線「新小岩」駅徒歩約19分に立地する、築17年で専有面積約20.5坪の3LDKのマンションの上乗せ率の高さにも驚かされた。この物件、交通条件に劣るうえ、滞納管理費が150万円以上ある。

 それでも、売却基準価額711万円に対し、落札価格は1,716万円と、上乗せ率は141%を超えた。そもそもの売却基準価額が相場に対して低いということもあろうが、かなり大胆な入札価格設定に思える。

 さらに、この新小岩の物件に関し、収益還元で価格を見ると、見込める賃料は月額12~13万円と思われる。とすると、競落価格をベースに考えて、実質年利回り6%強ではなかろうか。この物件の落札者である再販業者は、低グロスの実需向けマンションが、消費税増税の駆け込みや、低金利の住宅ローン利用を背景に、購入需要が大きいと判断しているのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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