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東京競売ウォッチ

2024年07月09日

第704回 亀戸の古ビル上乗せ率130%超落札

 6月26日開札で26本の入札を集め一番人気であった物件は、JR総武線「亀戸」駅徒歩5分に立地する古ビルであった。土地は西側で幅員約6mの公道に面する約42.3坪で、そこに築46年を経過する鉄骨造4階建ての延床面積約110坪の事務所、作業所ビルが建っている。占有者は化粧品を製造する会社で、所有者から賃借して営業している。ただし、その賃借権は今回の競売で買受人の引き受けにはならず、明渡の6か月猶予が与えられるのみである。この物件の売却基準価額は5889万円であったが、競落価格はその約2.3倍(上乗せ率133.5%)であった。これは建物をゼロ評価とした場合、1坪325万円超の競落水準で、接面道路(西側公道)の相続税路線価(45万円/㎡)の約2.2倍に相当する。競落者はおそらく建物を解体、更地化した上で共同住宅等用地として商品化すると思われる。

 ところでこの物件がもし競売ではなく任意の売却であったら、この競落価格まで売却価格は伸びなかったと思われる。それと言うのも賃借人の借家権が残るからであり、これを明渡するには、家賃の2年分以上のコストが掛かる。この物件の賃料は月額70万円弱であるので2000万円以上の明渡コストが見込まれる。しかし競売であるのことでこの明渡の障害が無くなるわけで、競売であるがゆえに価格が高くなる事例と言えそうだ。不良債権対象の古ビルは競売での処分が債権者にとっても有利である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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