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東京競売ウォッチ

2010年1月20日

第25回 09年の東京地裁市場分析(下)

 前回に続き09年東京地裁競売市場の分析を行いたい。

表1 落札価格の売却基準価額に対する上乗せ率(%)
種別08年09年
マンション24.9635.59
土地付建物42.4328.81
土地28.4944.79
借地権付一戸建てなど41.9323.97
全体34.0833.00

表2 種別内訳(%)
種別08年09年
マンション68.2854.45
土地付建物23.7931.34
土地2.846.58
借地権付一戸建てなど5.097.63
全体100100

 まず競落価格の水準であるが、表1を見ると、全体としては少し上乗せ率が低下した。しかし注目はマンションで、09年は08年から8ポイント近く上昇している。前週本欄で売却率が年後半から上昇し、また1物件あたりの入札本数も年後半で大きく伸びたことは述べたが、上乗せ率も明らかに上昇している。下半期だけで計算すると、上乗せ率は47.33%(上半期26.61%)に上っており、1年の間でも、年後半では前半に比べて15%超は高い水準で競落されたことになる。

 ただ表2を見るとわかるが、08年に比べるとマンションの比率は大幅に低下し、ここ数年のマンション比率上昇の傾向が転換された。これは年後半、マンションの対象物件数が減少したこともあるが、08年470物件弱であった土地付建物がその約2倍の920物件超と大きくその数を伸ばしたことにある。土地付建物といっても、いわゆる居住用の一戸建てというより、事務所や店舗といった用途が絡んだ物件が増加しているように思う。不況による小規模企業の破綻増加の影響があるのではないだろうか。また、大きな都心商業地も対象物件として散見されたが、その多くは開札前に取下げとなるか、債権者が自己競落をして決着がついていった。

 そして、大量入札を集めるマンションの落札者はほぼ再販業者であったが、売却基準価額が1億円を超えるような高グロスの高級住宅地物件は、個人の落札が中心であったのも09年の特徴の一つであった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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