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東京競売ウォッチ

2010年1月25日

第26回 どうなる10年の東京地裁競売市場

 先週まで09年の東京地裁競売市場の分析を行ったが、今回は今年2010年の競売市場がどうなるのか、私見を述べさせて頂く。

 まず、対象物件数について考えてみたい。09年は開札回数が1年計で28回であったが、今年は9月末までで23回が予定されており、通年では31回程度と、09年に比し、3回ほど多くなる見込みである。これからすれば対象物件数は増加することが考えられるが、1回あたりの対象物件数が09年の最後3カ月程度(70件程度)で推移していけば、逆に09年比で減少することも在り得る。これは今年に入って銀行等が不良債権物件を積極的に競売に伏していくのかに係わってくる。

 また、これに関連して09年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」の影響についても注目される。

 特に個人住宅ローンに関しては、この法律施行後、支払いについての相談が既に銀行等に急増している旨の新聞報道もあって、影響の可能性が高いように思う。逆に本来主として救おうとした中小企業については、返済猶予などを取引行に要請すれば、それ以後の融資に影響が避けられないため、今のところあまり利用されていないようだ。

 もし金融機関が個人の住宅ローンについて、融資条件の見直しや緩和を従来以上に踏み込んで行うことになれば、競売市場への物件流入が減少し、東京地裁ではとりわけマンションの件数が減少する。

 今年はマンションの割合がさらに低下し、それに代わって景気低迷による小規模企業の事業所や店舗などの対象物件割合が増加するのではないだろうか。また、売却率については再販業者の入札参加は当分活発な状況が続く気配であり、90%を超す水準で当面推移しそうだ。これに伴い競落価格水準もしばらく09年後半並みと予想される。

 しかし、高水準での落札が特にマンションについて、半年以上も続いてきているので、これの反動が年半ばにはやって来る可能性があろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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