リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2024年01月16日

第681回 対象物件最少の23年最後開札

 23年最後の開札は12月20日に行われた。そこで驚かされたのが、開札対象物件の少なさであった。19件が入札期間に入ったものの、そのうち9件が取下げとなり、わずか10件だけが開札対象であった。30年近くこの開札トピックス執筆を担当しているが、最少の件数であった。23年の競売市場の総括は次週以降3週に亘って掲載する予定であるが、この件数の少なさの背景には不動産価格の上昇があるのは間違いないだろう。

 この日の一番人気は東京メトロ日比谷線「南千住」駅徒歩約14分に立地する築約5年の2LDKのマンションであった。専有面積は約16坪のこの部屋には買受人に対抗できない賃借人家族が居住している。この賃借人は明渡猶予6か月間が与えられるものの明渡さざるを得ない。よって買受人は現空物件として再販が出来る。この物件の売却基準価額は2772万円であったが、そこに入札19本が集まり、最高価4222万円にて競落された。

 売却基準価額に対する競落価格の上乗せ率は52%強と高水準ではあった。しかしそれより驚いたのは23年7月に同じマンションで同じ専有面積の部屋が4300万円で成約している事実である。競落者は現在の相場とほぼ同水準で競落しており、再販するとすれば24年以降の中古マンション相場が上昇することを前提としている。果たして24年もマンション価格上昇トレンドが本当に続くのか注目したい。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.