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東京競売ウォッチ

2015年2月17日

第265回 方南町のファミリーマンション

 収益不動産の利回り低下がよく話題になる現在の不動産市場である。その中で、区分マンションにおいては、収益利回りを入札価格設定の目安にするのは、一般的に買って貸す目的の投資家に再販するワンルームマンションの場合である。

 ファミリータイプの場合は、空室にしてから再販し、マージンを得る目的での入札が一般的である。したがって、ファミリーマンションの競売物件で、最先の賃借権者が占有しているケースでは、再販業者の入札が少なく、入札本数が伸びない傾向にある。

 1月22日開札では、東京メトロ丸ノ内線「方南町」駅徒歩約10分に立地する専有面積約18坪の3LDKで最先の賃借権者が占有する部屋が開札対象であった。その賃借権は月額14万円の賃料で、年収は168万円、管理費、修繕積立金、固定資産税等を差し引いた純収入は約123万円になる。この物件の売却基準価額1,175万円で落札できれば、これに滞納管理費約66万円を考慮し、年約10%の利回りを得られる。

 これに対し入札は17本あり、最高価2,400万円にて落札されていった。滞納管理費を考慮すると年利回り5%の落札水準ということになる。5%は築中古20年超の区分マンションとしてはあまり妙味を感じない。

 また、競落価格を専有面積坪単価で見ると、140万円弱である。ちなみに、この物件の築年数は約27年であるが、同じ築年数で同地域に存する中古マンションの昨年の成約状況を調べてみると、おおよそ専有面積坪単価で150万円程度が成約価格のようだ。

 そうすると、仮に先の競落物件の賃借人が退去後、リフォーム等修繕を施すと再販利益はほとんど望めないだろう。したがって、今回の落札は将来の相場を強含みに捉えて行われたものと思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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