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東京競売ウォッチ

2013年2月26日

第170回 収益型アパートへの入札

 2013年1月は計2回の開札であったが、この2回の開札平均で、1競落物件あたり、10.13本の入札があった。この数字は昨年後半(下期)の平均値とほぼ同じであり、昨年後半の活性度が継続されている。

 しかし、その中にあって収益型アパートへの入札が強気なのが目を引いた。

 1月31日も、JR山手線「池袋」駅徒歩約13分に立地する木造(一部鉄筋コンクリート造)のアパートに大量入札があった。築22年と、新しいとは言えない物件であり、主に狭小ワンルームで、全部で12戸ある。年収500~600万円の物件であるが、売却基準価額が2,527万円であった。これに対し、入札30本があり、落札価格は6,590万円弱であった。表面利回り年10%を割り込む高水準に驚かされた。

 またこのところ、お寺の競売物件が1~2件見られたが、1月31日開札では、やはり足立区のお寺が競売対象になっていた。この物件は昨年9月に入札になったものの、応札がなかった(その後の特別売却にも応札なし)。

 売却基準価額は2,397万円から今回は1,918万円に切り下げられ、その結果、入札がわずか1本ながらあり、1,555万円と、売却基準価額を下回った買受可能価額と、ほぼ同額の落札価格で落札された。

 土地が約70坪あり、割安感はあるが、やはり建物の特殊性、特に神祭具の明渡し時における処理方法などが、買受人に入札を躊躇わせたようだ。

 また、この1月31日開札では、敷地利用権のない江東区のビルが競売になったが、結果として、そのビルの敷地所有会社が競落していった。

 競売というシステムは、これら事例のように、通常売買では売却が難しい物件の処理の方法としても有用である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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