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東京競売ウォッチ

2010年8月30日

第55回評価難しい事業用物件

 居住用マンションなどに比べて評価が難しいのが事業用の物件、特に区分所有の事業用物件であろう。8月5日開札では、京浜東北線「蒲田」駅徒歩4分に立地する1階の区分所有店舗が売却基準価額の2倍以上で落札されたのに目を引かれた。

 この物件は築30年のマンションの1階で、専有面積10坪ほどの部屋である。現状スナックが経営されており、賃料は17万円である。管理費及び固定資産税等を差し引いたネットの年間収受賃料は約167万円である。これに対し、売却基準価額は862万円であり、利回り年19%を超える。

 結果、入札が11本入り、最高価1,888万円にて個人が落札していった。年9%程度の利回り水準である。

 ちなみに、この物件の賃借人は20年以上ここで営業しており、その間に2度物件オーナーが変わっている。こういった物件は、テナントの安定性に入札者が着目する部分が大きいと思われる。

 この日、丸の内線「新宿御苑」駅徒歩4分に立地する築約28年のマンションの事務所の3部屋が開札対象であったが、そのうちの1室は専有面積約11坪で売却基準価額920万円であったが、そこには17年間、賃料約9.9万円にて賃借しているテナントが占有している。実質年収は約83万円であるが、売却結果は売却基準価額920万円に対し、3本の入札で、最高価1,212万円にて落札された。

 一方で3部屋のうち専有面積約10坪の1部屋は空室である。この部屋の売却結果は売却基準価額793万円に対し、入札は1本で最高価はそれを下回る650万円にて落札された。

 事業用物件はテナントの内容が大きく入札結果に影響するようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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